「夏も近づく八十八夜」で始まる歌をご存じですか。
この歌の題名は「茶摘」(ちゃつみ)です。歌詞にある「八十八夜」は日本茶の葉を摘む時期を表しています。
新茶の季節です。
八十八夜は立春から数えて88日目の日を指していて、毎年5月2日頃がこの日にあたります。今、日本で起こっている日本茶の需要の変化について理由を探ってみたいと思います。
もくじ
若者の間で日本茶がひそかに流行?お茶の需要の変化
昨年からの新型コロナウィルス感染症(コロナ)の影響が「日本茶」市場にも影響しました。
昨年から「三密」を避けるためにお葬式に参列者を呼ぶことが激減しました。このためお葬式の返礼品としての「日本茶」の需要が激減したのです。これは大打撃。今年もこの状況が続いています。
次に、ペットボトルへ卸していた茶葉の激減。
こちらは、テレワークでオフィスへ行く人が減ったためペットボトル需要が減ったことが要因です。
さらに、カフェへ行く人が減り、カフェへの卸しが減りました。
若者が茶葉(リーフ)でお茶を飲む!日本茶が流行するの理由
コロナの影響のある環境下で、若者には変化が出ています。
昨年、農林水産省が行った調査によると、「以前と比較して、コロナ後でリーフ(茶葉)でお茶を飲むことが増えた(減った)」に、18歳から29歳では4人に1人が「増えた」と回答しました。
この「リーフ(茶葉)」はペットボトルと分けてカウントするためで、ティーバックも含まれます。
リーフが増えた理由は、今までは外ではペットボトルでお茶を飲んでいたが、通勤や通学も含めて外に出なくなったので、ペットボトルで飲まなくなった。
逆に、テレワークで巣ごもり状態なので、家でゆっくりリーフ(茶葉)で飲むことが増えたことが理由です。
「日本茶カフェ」ハイグレードが人気
若者に起こっている変化、そのもうひとつは「日本茶カフェ」の人気があります。
若者世代が急須で丁寧に淹れた日本茶を飲む。この世代にはこの美味しさが初めての経験なので「新しい飲み物」としてとらえられているようです。
そして、この世代はいいものにこだわる人が多い。
たとえば、コーヒーの豆の生産地やグレードにこだりを持ち、家で飲むコーヒーに1杯600円位かけてハンドドリップで丁寧に淹れる。この人たちは、これと同じ感覚で、せっかく家で飲むのだから「よいものを」という感覚を持っている。
この若者需要にこたえるべく、生産者も変化しています。
埼玉県のお茶どころ「狭山」では香り重視の「萎凋香(いちょうか)」をいうお茶を出しています。
これは「一般の緑茶製造では行われない萎凋(いちょう)という工程を加え、花や果実のような甘い香りを引き出しました。
萎凋(いちょうとは、収穫した茶葉を風通しの良い場所で撹拌し、僅かに萎れさせることで微発酵を促す工程です。」手間をかけて生産しているのですね。
外国での日本茶の人気は?
外国向けの日本茶の輸出は過去5年で1.5倍に増えています。
これは、ユネスコで和食が世界遺産に認定されたことにより、日本食の人気が高まっていることがあげられます。
また、健康志向の高まりにより、「無糖飲料」としての日本茶の人気が高まっています。
外国でもコロナの影響があり、スーパーで販売している安価なものは売れゆきがよくありません。
逆に、中級から上級の茶葉の需要は上昇しています。
日本茶の流行とあらたな日本茶の時代へ!
「茶摘」(ちゃつみ)じゃ明治45年刊行の「尋常小学唱歌」に掲載された日本の唱歌です。
日本人みんなが知っている歌でした。
日本茶は明治、大正、昭和の中頃までは、日本人にとって身近なものでした。
現在、大学でアンケートを取ると、「急須(きゅうす)」が家にある人の数が年々減少してきています。100人中10人から数人になり、数年前はついにひとりになりました。そのひとりに聞いてみると「おばあちゃんが持っている」との回答。
「おばあちゃん」しか使っていないから自分は急須を使ったこともないし、急須で淹れたお茶を飲んだこともない。これが日本の実態のようです。
お茶の産地であるお茶処は日本各地にあります。今は日本を代表する煎茶の季節。今年はあらためて味わってみるのもいいかもしれませんね。
【参考】「茶摘」歌詞
夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘じゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠
コメントを残す