梅田哲也パフォーマンス「人工vs自然」

昨年末、名村造船所跡地で開催された-NAMURA ART MEETING'04-'34 Vol.04 臨界の創造論-で、雨宮庸介+梅田哲也によるインスタレーション+ライブ・パフォーマンス「壁の間に卵を立てる」に遭遇した。総時間26時間に及ぶパ フォーマンスはかつてない体験であったが、正確に言うと26時間逐一その場に居合わせた訳ではない。途中コアタイムが2度ほどあり、幸運にもそのどちらの 時間帯にも立ち会うことができた。全長約70m×幅15mの細長い倉庫の中で約10数名のパフォーマー達がおのおの勝手に作業をしている。どうやら彼ら彼 女達はいわゆるパフォーマーではなく、このために集められた素人らしい。卵を立てる人、何かをノートにひたすら書きつけている人、壁を移動させている人、 モップで床を拭いている人、キックホードに乗っている人、モールス信号で交信する人、ボールを転がす人、簡易ベットに倒れて横たわっている人、バケツを靴 代わりに歩く人などなど。パフォーマーの動きにあわせ、歩きながら鑑賞していると自分がその空間の中のパフォーマーの一員になったかのように錯覚する。し かしそう思うのは自分だけで、彼ら彼女達はお互い会話も意思疎通も図らず、何か共通のルールのようなものを守りながらなんらかの作業をたんたんとこなして いるのである。他人の視線に晒されるのはかまわないが誰ともコミュニケーションをとろうとしない人達。この会場に入った時、まるで何処かの精神病棟に紛れ 込んでしまったかのような違和感を覚え、それが次第になじんでくると、まるでテオ・アンゲロプロスの映画の長廻しのワンシーンを見ているような気分にさせ られた。日没を体験し、暗闇から朝日が徐々に差し込むその空間は、刻一刻とあらゆる事象が変化し、見る者と見られる者の境界線も曖昧になり、作品と現実の 間に横たわる時間も幻になっていった.....。私は今から4年ほど前、ヨコハマ国際映像祭のオープニング・パフォーマンスとして梅田哲也、神村恵、 contact Gonzo、捩子ぴじん、堀尾寛太らと「停電EXPO」という作品のプロデュースをし、彼らと共闘した。が、この「壁の間に卵を立てる」を体験し、その 「停電EXPO」は完全に過去のものになってしまったと痛感したのである。

今、梅田哲也は最も刺激的なアーティストの1人である。音、光、空間それらすべてを自在にあやつる手つきは、演劇的ですらある、といえるのではないだろうか。

その梅田哲也の単独パフォーマンスを昨年から定期的に催して来た。最初は横浜美術館での「ゴミと箱と音楽」、韓国 Festival Bo:mでの「waiting room」、そして今回の「人工vs自然」。ヨコハマ、ソウル、トウキョウ3都市を巡る道行はファッションの聖地ハラジュクでようやく完結することにな る。梅田哲也を未だ体験していない人達は、この機会に騙されたと思って遭遇して欲しい。特に演劇やコンテンポラリー・ダンスに従事している人達が見たら多 くの発見と示唆があるのではないだろうか? 今回のパフォーマンスは「基礎編」と「応用編」の2部制に分かれていながら、トータルでも体験できるようになっている。どちらか片方だけ見てもかまわない し、通しで見ていただいてもいい。インターバルを含めて約5時間、梅田哲也がこの日、たった1人で挑む。もうこれ以上は何も言うまい。皆様方には是非お立 ち会いいただければと願っています。

日本パフォーマンス/アート研究所 闇プロデューサー 小沢康夫

Official Site:
http://www.j-pai.net/artifacts_nature/

会期
2013年3月9日(土)基礎編15時〜、応用編18時〜
会場
VACANT

出演者プロフィール

梅田哲也
アジア、ヨーロッパを中心とした音楽やパフォーミングアートのフェスティバル出演、国内外における展覧会への出展など、ライブ・パフォーマンスやインスタレーションを中心に幅広く活動するアーティスト。空間の構造の穴を突き、音やモノの運動、光などが絡みあう現象を立ち上げたり、ときにその場の状況を反転させるような行為をおこなう。これまでに美術館やギャラリーなど既存の展示空間のみならず、倉庫や廃校、旧道トンネルなどで展示をおこない、ホワイトキューブにおいても、壁の奥や天井裏などのデッドスペースをも魅力的な「素材」と捉えた作品を創出してきた。主な展覧会に「レゾナンス共鳴」サントリーミュージアム天保山(2010)、「あいちトリエンナーレ2010」、「Simple Interactions. Sound Art from Japan」ロスキレ現代美術館(2011)、「x_sound: John Cage, Nam June Paik and After」NJPアートセンター(2012)、「Double Vision: Contemporary Art from Japan」モスクワ現代美術館/ハイファ美術館(2012)など。現在開催中の展覧会に「ソンエリュミエール」金沢21世紀美術館、「soundpocket」聲音掏腰包がある。大阪在住。
http://siranami.com/

概要

主催:日本パフォーマンス/アート研究所
助成:公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団
協力:VACANT
フライヤーイラスト:我喜屋位瑳務 http://gakiyaisamu.com

チケット
(基礎編)15時~ 前売 2,000円/当日 2,500円(ワンドリンク付き)限定50名
(応用編)18時~ 前売 2,000円/当日 2,500円(ワンドリンク付き)限定50名
(基礎編、応用編) 15時~20時 通し券 前売り3.000円、当日3.500円(ワンドリンク付き)限定50名
※17時〜18時の間、インターミッションを設けます。基礎編のチケットを購入したお客様で応用編を引き続きご覧になりたい方は+1000円受付でお支払いいただければ可能です。
チケット取り扱い:インターネット予約のみ http://www.j-pai.net/artifacts_nature/

お問合せ
info@j-pai.net

(期間中、フライヤーのイラストを書き下ろした我喜屋位瑳務の展覧会「X」をVACANTの1Fにて開催しています。2013年3月2日(土)~3月17日(日)12:00~20:00)